アクティブ防災とは? ABOUT
アクティブ防災考案のきっかけ TRIGGER
重要だとわかっている防災が、
なかなか普及しない理由は?
『子連れ防災手帖』を編集するにあたり、お話を伺った多くの被災された方々が「震災は起こると聞いていた。だけど、まさか自分が被災者になるなんて思っていなかった」と、おっしゃっていました。
「家族の命と未来を守る防災は大切。
それなのに、どうして重い腰があがらないのだろう?」
その原因を分析したところ、防災を後回しにしてしまう理由は、MMK【M:メンドウ、M:(災害が起こらなかったら)ムダ、K:(お金や負担が)カカル】にあることがわかりました。
さらに取材を進め、自分たち自身でも、実際に防災を始めてみると、重要な点に気がつきました。真剣に取り組んでいるつもりでも、防災がどこか他人事になってしまっていないかということです。
「非常食に乾パンを備えてませんか?子どもはパサパサしたものを食べてくれませんでしたよ」。
子どもの偏食解消レシピを編集した際、そこに「子どもはパサパサしたものを嫌います」としっかりと書いたにもかかわらず、備えていた非常食は乾パン。自らが持つ知識や経験が、防災にまったく活かされていないことにショックを受けました。災害時に本当に役に立つ備えをするためにも、防災は日常生活の延長上にあるべきです。
普及を妨げる要因“MMK”を取り除き、個人のライフスタイルにあった防災を提案することが家族の命と未来を守る防災になるのではないか?
これがアクティブ防災を考案するに至ったきっかけです。
“いざという時には、命に代えてでも、
自分の大切な人を守れる”と思っていませんか?
地震や津波、台風、火山の噴火などの自然災害が発生しやすい日本。その日本に住む私たちは、災害が起こったときのことをどれくらい理解しているでしょうか?
東日本大震災をはじめ、阪神淡路大震災や中越地震、その他、大きな災害に遭遇すると、メディアで大きく取り上げられます。連日のように被災地の様子を目にしていると、災害について知っているつもりになってしまいがちです。ところが、被災母子支援を行う中で伺った体験談は、「災害について何も理解していないのだ」ということを改めて気づかされるものでした。
- 机の下に潜っていても、横からの飛んでくる電化製品が凶器になった。
- 幼い子どもを連れて、避難所には行けなかった。
- 夫との間に埋められない溝ができた。
- 子どもが非常食を食べてくれなかった。
万が一、災害に見舞われたら、自らの命に代えてでも、自分の大切な人は自分が守ると考えていませんか?
それは次の2つの点で間違いです。
❶ 守りたくても、助けられない……それが大震災の現実です。
「隣の部屋の子どものところまで行きたかったが、立ち上がることもできなかった」「車で夫のところに向ったが、津波被害で通行止めになっていた」など、守りたい気持ちがあっても、助けられなかったという体験談がたくさんありました。
自然災害を前に人間は無力です。命に代えてと誓っても、発災の瞬間には、何もできないという前提で、防災を考えることが大切です。
❷ サバイバーズギルト(災害等で生き残った人が持つ罪悪感)について知ってますか?
「車で高台に避難している時に、一時避難所で集合している人たちを見かけた。後日、自宅の様子を見にいくため、その一時避難所の近くまで行くと、『ここから先は遺体がたくさんあるので、進入禁止にしている』と止められた。もし、あの時、無理矢理にでも車を止めて『一緒に避難しましょう』と声を掛けていれば……」。
震災から1年、2年経っても、「あの人が亡くなったのは、自分の責任だ」「自分が見殺しにしたのではないか?」という罪悪感(サバイバーズギルト)に悩まされている方がたくさんいらっしゃいます。罪悪感の多くは、自分の力が及ぶはずのないことに対するものです。
もし、自分の命に代えて大切な人の命を守ったとしたら……。生き残ったその方はサバイバーズギルトと無縁でいることができるでしょうか?
大切な人も、自分も、見知らぬ人も……。みんなで生き残る防災に取り組んでいくことが重要です。
被災生活とは、
“にもかかわらず、生活していくこと”
震災の半年後、仙台から石巻に行く途中で、目にした光景に思わず言葉を失いました。
津波被害で、海から運ばれたであろう大型の漂流物が1階の壁に突き刺り、逆に家の中の物が全部流されたように見えた家。その家の2階のベランダに、洗濯物がほしてあったのです。
未曾有の災害、想定外の被害……そのような災害に見舞われた中でも、生きている限り、生きるための活動が必要になります。“にもかかわらず、生活していくこと”。その視点から、我が家の備えを見直すと、本当に備えておくべき物が見えてきます。
100世帯あれば、100通りの生活があります。100通りの生活を、リストやマニュアル化された防災術で十分に守ることができるでしょうか?
生活(ライフスタイル)の延長上にある備えについて考え、取り組んでいくべきです。
このように、支援活動を通した“防災に関する気付き”がアクティブ防災事業を立ち上げたきっかけです。